日本酒講座⑩日本酒を寝かせる①
搾りたてがピークじゃない
日本酒を寝かせると言っても添い寝するのではありませんよ。
ワインも焼酎もウイスキーも、お酒は熟成させてなんぼのもの。と私たちは、ぼんやりとそのことを知っている。
なのに、日本酒となると一転、「古くならないうちに飲まなきゃ!」と焦りだすのはなぜか?
「搾りたてが頂点」と信じる人も少なくない。
清酒造り400年余りの歴史の中で「新しいほど良き」と言い出したのは、せいぜい昭和の吟醸酒ブーム以降のことである。
それまでは1~2年寝かせた酒がスタンダードだったし、江戸時代に至っては5年酒を「味が濃く、香りが美しくて最も佳なり」と激賞する文献も残ってる。
①寝かせるとどんな味になる?
②お酒のどんな変化が起こっている?
③美味しくなる寝かせ方ってある?
④料理との相性は?
⑤家庭でも熟成できるか?
とプロにきいてみました。
①寝かせるとどんな味になりますか?
A 熟成した日本酒は大別すると2タイプの濃醇系と淡旨系に分か れます。
シェリーのような香味が重なっていく濃醇系と、角が取れ、エレガントに整っていく淡旨系に分かれます。
・濃醇系
べっ甲色、紅茶色、茶色く色づく
常温貯蔵が多い
シェリーのような香味に変化
・淡旨系
色の変化はほぼなし
低温貯蔵が多い
角が取れて旨味が丸くまとまる
②お酒にどんな変化が起こっているの?
A 時間と温度がお酒の成分を変化させていく。
・乳児期
搾りたて~数ヵ月
搾られて空気に触れた瞬間から、日本酒の熟成が始まる。新酒の赤ちゃん期はピチピチのガス感や麹香、エステル香、アルコールの刺激が先立ち、個性はまだ見えづらい状態。
・少年期
0年~1年
新酒特有の̚カドが取れ、硬さは残るも、ややまろやかに。香り、味わいの個体差が出始め、個性の萌芽が見て取れる。一方、落ち着きのない子は、まだやんちゃぶり健在のお年頃。
・青年期
2~5年
エステル香は抜ける一方、液体中の成分変化が進んで旨味は増していく。酒としての個性も際立ってくる。人間で言えば、脂ののった働き盛り。着色が一気に進む若年寄タイプも。
・壮年期
5年~
熟成の型は「濃醇」「淡旨」の二分化へ。メイラード反応が進んで色はより濃く、カラメル様の香りは増し、余韻はより深く成熟。
次は③美味しくなる寝かせ方です。