秋の日本酒「ひやおろし」

秋が近づく頃、日本酒ファンが心待ちにしているのが「ひやおろし」です。

ひやおろしは、春先に絞ったお酒を夏の間熟成させて秋に出荷する日本酒で、熟成の旨味と丸みあるまろやかな味わいが魅力です。

〇夏の間熟成させて秋に出荷する酒

ひやおろし」とは、春に搾ったお酒に一度だけ火入れを行って、夏の間に熟成させてから出荷するお酒のことです。

通常、日本酒は貯蔵前と出荷前の2回、火入れと呼ばれる加熱処理が行われます。

一般的に2回の火入れを行ったお酒は、香味が落ち着いて口当たりがなめらかになるとされています。

一方、火入れを全く行わない「生酒」や、火入れを一度だけ行う「生貯蔵酒」など、「生」の字が入るお酒は、みずみずしいフレッシュさが特徴です。

ひやおろしは、春に一度火入れを行い、貯蔵後は火入れを行わずに出荷される「生詰め酒」です。

あえて2度目の火入れは行わないことで、生の味わいも堪能できるのです。

〇ひやおろしの飲み方

・スッキリ飲みたいなら

ひやおろしの繊細な味わいを楽しみたいなら、冷酒や常温がおすすめです。

氷を浮かべたグラスに、ひやおろしを注いだ「オン・ザ・ロック」にしてもおいしくいただけます。

冷酒や常温で飲むなら、すっきりとした口当たりを堪能できる辛口のひやおろしを選ぶと良いでしょう。

・風味を楽しみたいなら燗酒で

ひやおろしの豊かな旨味やコクを堪能したいなら、燗酒がおすすめです。

40度前後の「ぬる燗」や50度前後の「熱燗」で飲んでみましょう。

 

9月出荷「夏越し(なごし)酒」は軽快さも楽しんで

夏越えしたばかりのひやおろしは、熟成によるまろやかさはありつつ、夏酒らしいフレッシュ感の残る軽快な味わいが特徴です。

冷や、常温、みぞれ酒にして楽しむのがおすすめです。

お料理は、豆腐や漬物など、さっぱりした料理がよく合います。

反対に、みぞれ酒と温かい料理を合わせるのも日本酒通ならではの楽しみ方でもあります。

さんまの塩焼きをつつきながら、晩酌のお供として楽しんでみてください。

10月出荷「秋出し一番酒」は秋の味覚に合わせて

日ごとに秋の深まりを感じる10月の頃になると、ひやおろしもさらに熟成を深めたまろやかさや芳醇な味わいを楽しめるようになります。

秋出し一番酒は3つのひやおろしの中でも味のノリや香りのバランスが良い点が特徴で、そのときの気分に合わせた飲み方ができます。

中秋の名月を楽しみながら、月見酒に選んではいかがでしょうか?

秋出し一番酒に最もおすすめしたいのは、40度くらいのぬる燗よりも少し温度の低い、約35度に温めた人肌燗です。温めることで、より甘味や香りが引き立って、秋の味覚ともよく合います。

11月出荷「晩秋旨酒」は深い旨味を堪能して

木枯らしが吹き始め寒さも本格化する11月には、ひやおろしの味わいも正に「完熟」の域に達します。

11月に出荷されるひやおろしは、熟れ切った豊かな味わいで「晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ)」とも呼ばれます。

おすすめの飲み方はぬる燗や熱燗で、あつあつの鍋を囲みながら楽しむのにぴったりです。

また、しっかりとした味わいのジビエや濃厚なチーズなどにもよく合います。